桜木紫乃さんの「砂上」
2018年 10月 29日
順番が来るまで2年ぐらいかかりそう!で、予約したのも忘れてしまいそうでした。
先日、アマゾンのギフト券をゲットしたので、迷わずこの本を買いました。
読んでみて、作者が書いたものの中で、私には難解で一番面白くなかった。(ごめんなさい)
何かこう平坦で掴みどころがなくて、主人公・冷央を取り巻く人間関係も真実ぽくなくて
優しさの中にいるから作家の道が遠いのでは?と読みながら思ってしまいました。
帯封に書かれている「人生のどん詰まり。女は、すべてを捨てて書く事を選んだ。」
金にも男にも見放され追い詰められていく冷央の生活。ある日、冷酷な編集者が現れて・・・・。
と、こう書いてあるとサスペンスタッチのザワザワするようなストーリー展開を期待するのだが、
あまり追い詰められた印象は感じられず、受け身に生きる女性の弱弱しか感じられなかった。
先ず、主人公・冷央が働くビストロのシェフは、小中学の頃からの同級生で独身、その母親は
息子の嫁に冷央をと願い、色々お膳立てするが息子の方にその気なし。
離婚した前の夫は、月々支払っていた5万円を減らして欲しいと言い出されても、仕方ないと
どこか受け入れてしまう冷央。
そんな姉を冷ややかに見る戸籍上の妹・美利(冷央が15歳の時妊娠、未婚で生んだ娘)が逞しい。
そして、母のミオ~冷央の妊娠を知った時、何も聞かず「産みなよ、私の子供にするから」と
言ってすべてを受け入れ、二人目の娘として美利を可愛がってくれた。
いつか作家になりたい、冷央はそんな夢を抱いて暮らしていた。
40歳になった冷央の前に、その冷酷な女性編集者・小川乙三が現れた。
「主体性がないのって、文章に出ますよね」と言われて戸惑う冷央。
主体性がない?自問する冷央に、素っ気なく小川は「あなたは今後、どうされたいんですか?」
と畳み込んで言う。
言葉に詰まる冷央に「前に応募した【砂上】をもう一度書いてみませんか?」と小川。
16歳で未婚のまま娘を産んで、戸籍上は妹として育った娘・美利と母との関係を書いた「砂上」
をもっと煮詰めて書け、と言われた冷央が何度も書き直して、世に出るまでの物語です。
舞台になった江別という街は、何度か通過した事があるだけの私には馴染のない土地なせいか、
主人公・冷央自身の性格も作家になりたい気持ちも茫洋としてよく理解できなかったです。
単に、読み込む能力がないだけかもしれませんが…。(-"-)
要するに冷酷な編集者、という存在がなかったら、冷央は作家デビューできなかったの?
と言いたくなるほど、冷央自身がクラゲのように漂っているような印象を受けました。
最後に、結末がオープンになるのですが……母親の墓場まで持っていこうとした秘密を書くこと
で、冷央の作家への決意が固まってくのですが~。
桜木紫乃さんの作家デビュー10周年記念作品だそうです。
「砂上」は直木賞受賞後の作品ですが、私的にはまだ受賞前の作品↓の方が親しみを感じて好きです。